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大阪地方裁判所 昭和32年(行)40号 判決 1966年2月07日

大阪市西成区松田町一丁目三〇番地

原告

尾崎茂一

右訴訟代理人弁護士

真鍋喜三郎

同市同区千本通二丁目一七番地

被告

西成税務署長

北川与三

右指定代理人

叶和夫

野村一夫

戸上昌則

山西偉也

徳沢勲

右当事者間の所得金額決定処分取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一、当事者双方の申立

原告訴訟代理人は、「被告が、昭和三一年七月九日付で、原告の昭和三〇年度分所得金額を一二〇万一〇〇〇円とした再更正処分中金五九万七三七七円をこえる部分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告指定代理人は、主文同旨の判決を求めた。

二、請求の原因

(一)、原告は、肩書住所地を事務所として不動産貸付業と清掃業を営む者であるが、昭和三一年三月一五日被告に対し昭和三〇年度分所得金額(以下本件所得金額という)。を金五八万四三七七円として確定申告したところ、被告は、同年五月一日本件所得金額を七五万二〇〇〇円とする更正処分をなし、さらに同年七月九日本件所得金額を一二〇万一〇〇〇円とする再更正処分(以下本件処分という)。をした。原告は、同年七月二三日本件処分につき被告に対し再調査の請求をしたが、被告は、同年八月二三日右の請求を棄却した。そこで原告は、同年九月一日本件処分につき訴外大阪国税局長に対し審査の請求をしたが、同国税局長は右請求の日から三箇月を経過しても審査の決定をしないので、原告は本件訴を提起したところ、同局長はその後の昭和三三年八月一日右審査の請求を棄却した(被告および大阪国税局長の右各処分の通知は、それぞれの処分のころ原告に到達している。)

(二)、しかしながら、原告の本件所得金額は金五九七三七七円(前記確定申告額に、後に判明した所得金一万三〇〇〇円を加えたもの)であるから、これをこえて本件所得金額を認定した被告の本件処分はその超過限度において違法であり、その取消を求めるため本訴請求に及んだ。

三、被告の答弁および主張

(一)、請求原因(一)の事実は認める。

(二)、被告の本件処分は左の理由により適法である。

即ち、原告は、本件所得金額計算の基礎となる帳簿書類はもちろん伝票、領収書、契約書等の原始記録をも保存していなかつたので、被告は、調査により次のごとく本件所得金額を算出した。

(1)  不動産所得

(不動産収入)

1 アパート収入 七一万三三〇〇円(明細は別表一、のとおり)

2 地代収入 三一万三一〇〇円(明細は別表二、のとおり)

3 家賃収入 六万六〇〇〇円(明細は別表三、のとおり)

合計 一〇九万二四〇〇円

なお、原告が1のアパート家賃の集金を中村昭に委託し同人が集金したうちから三三万円を原告の収入とし、他は同人の所得とする旨とりきめていた事実はない。また、2については、所得税法上収入すべき金額とは、請求権として権利の確定したものであつて、既収、未収を問わないものである。

(必要経費)

1 固定資産税 一一万三三一四円(内訳は別表四、のとおり)

2 修繕費 一一万六七〇〇円

3 地代・家賃集金手数料 二万三三二五円

合計 二五万三三三九円

なお、所得税法上必要経費とは、総収入金額を得るために必要なものをいうのであつて、原告所有土地四二一五坪のうちその六割相当の空地に対する固定資産税は、地代収入を得るために必要なものではないから、所得税法上必要経費に該当しない。

また、原告主張の、空地の清掃、借地希望者の応待、案内等に要した雇人費については、原告が借地希望者の応待、案内等に雇人を配置した事実はないばかりでなく、同じく必要経費に該当しないものである。

右のとおり、不動産収入から必要経費を差引いた八三万九〇六一円が不動産所得となる。

(2)  事業所得

(清掃事業収入) 三五〇万一九六三円

(必要経費)

1 事業税 四万六六四〇円

2 修繕費 六万三八五〇円

3 組合賦金 一八万四七〇一円

4 雇人費 二一五万九二〇〇円

5 消耗工具費 三〇万一九〇〇円

合計 二七五万六二九一円

右のとおり、清掃収入から必要経費を差引いた七四万五六七二円が事業得所となる。

(3)  給与所得 一万一〇五〇円

右は、西成清掃業協同組合から原告に対して給与された役員報酬一万三〇〇〇円からその給与所得控除一九五〇円を差引いた額である。

以上により総所得金額((1)+(2)+(3))を計算すると一五九万五七八三円となるから、右の範囲内で、本件所得金額を一二〇万一〇〇〇円とした被告の本件処分には何ら違法な点はなく、原告の本訴請求は理由がない。

(被告の、地代収入の仮定的主張)

原告は、前述のように、帳簿ならびに原始記録等一切所持せず、また、被告の調査にさいし非協力的であつたので、収入全額が判明しなかつた地代収入についてのみ、次のとおり推計した。

被告の調査した範囲で、原告の借地人のうちその借地坪数の判明している借地人は別表二に記載してある借地人のうち「借地坪数」の記載ある借地人であるが、その人数は五三名である。そして、その借地坪数の総計は一〇四四坪七勺であり、その年間地代の総額は二四万七七〇〇円である。従つて、年間一坪当りの地代は約二三七円となる。ところで原告は、その所有土地四二一五坪のうち四割相当の一六八六坪を賃貸しているのであるから、年間地代収入は三九万九五八二円となる。

(算式)237(円)×1,686(坪)=399,582(円)

右のとおり、推計による地代収入は三九万九五八二円であるから(他の収入および必要経費は主位的主張に同じ。)

原告の本件所得金額は一六八万二二六五円となり、その範囲内でした被告の本件処分には何ら違法はない。

四、被告主張事実に対する原告の認否、および主張

(一)、原告が、本件所得金額計算の資料となる帳簿書類および伝票等の原始記録を保存していなかつたことは認める。

(二)、不動産収入のうち被告主張のアパート収入は否認する。

(1)  即ち、被告主張の西成区東今船町三番地所在のアパート今船荘は、原告の子女尾崎豊子所有の物件であつて、その家賃収入は右豊子に帰属すべきで、かつそれは四万円をこえるから、同女は当時の所得税法八条にいう扶養親族に該当しない。従つて、右のアパート収入は、原告の所得から分離して課税すべきものである。

(2)  仮に、右のアパート収入が原告の所得として他の所得と合算して課税されるとしても、昭和三〇年ごろは、アパート居住者はほとんど「博徒」、「ポン引」等で家賃の集金は容易でなかつたので、原告は中村昭に委託し、同人が家賃を集金してそのうち三三万円を原告の収入とし、他は同人の所得とする旨とりきめしていたものである。従つて、原告のアパート収入は三三万円である。

(三)、不動産収入のうち被告主張の地代収入は否認する。

(1)  原告の昭和三〇年度分地代収入は一二万六一八〇円である。被告主張の別表二に計上してある地代は、概して、被告が地代調査をした昭和三二年ないし昭和三四年時の地代であつて係争年度の地代ではない。係争年度の地代はたとえば別表五のとおりである。

(2)  被告主張別表二、番号(15)の地代は、昭和三一年一一月一五日に月額七〇〇円と定め同日領収したもので係争年度の収入に入らない。同番号(49)の地代も同様昭和三四年一月一三日裁判上の和解で定めて、このころ領収したもので係争年度の収入に入らない。同番号(67)の地代は、建物収去・土地明渡請求訴訟係属中でいまだ受領していない。

(四)、不動産収入のうち被告主張の家賃収入は否認する。

被告主張の西成区松田町一丁目九番地の一所在の共同住宅は、原告の親族である尾崎徳三郎が昭和三一年五月に原告から借地して建築したものであり、原告の所有でないのはもちろん、係争年度には存在しなかつたものである。従つてその家賃収入が原告の所得に帰せられるわけはない。

(五)、必要経費のうち被告主張の固定資産税は否認する。

原告所有地四二一五坪のうち四割が貸地で六割が空地になつていることは認めるが、西成区松田町所在の「つるや旅館」の敷地も原告所有地であり、右の空地を含めて「つるや旅館」に賃貸し、原告が固定資産税を支払つているからこれからも必要経費として認めるべきである。そうすると、固定資産税は総額二四万七四五〇円である。

(六)、不動産収入から控除すべき必要経費として、被告主張の項目の外、雇人費二三万円を認めるべきである。即ち、原告は前記の所有空地を将来他人に貸付ける準備として、雇人を使つて清掃するのはもちろん不動産所在現場の見易い箇所に番小屋を建て、ここに常時雇人をおいて借地希望者の来訪あれば応待、案内させていたのである。右の雇人は一日一人の割合で配置し総額二三万円支出した。右費用自身は、現実の地代収入に益してはいないが、将来地代収入を得る目的があれば、不動産収入から控除すべき必要経費として認めるべきであることは当然である。

(七)、清掃事業収入および清掃業雇人費が被告主張のとおりであることは認める。

(八)、被告主張の給与所得は認める。

(九)、被告主張の地代収入の推計は争う。

五、証拠関係

原告訴訟代理人は、甲第一号証の一ないし三、第二号証ないし第四号証第五号証の一ないし三、第六号証の一、二、第七号証ないし第二一号証、第二二号証の一ないし一二、第二三号証の一、二、第二四号証を提出し、証人小橋秀一、金子正、細見健二、都志英雄、木村まさの、浜口マサノ、阪口美智子、松本光庸、高田美恵子の各証言ならびに原告本人尋問の結果を援用し 乙第八三号証の二のうち作成日付は否認し、中村名義の印影は認め、その余の成立は不知である旨述べ、その余の乙号各証の成立をすべて認めた。

被告指定代理人は、乙第一証ないし第七七号証、第七八号証の一ないし五、第七九号証ないし第八二号証、第八三号証の一、二、第八四証、第八五証の一、二を提出し、証人小橋秀一、金子正、山本守、畚野佐一郎の各証言を援用し、甲第六号証の一、二、第一八号証、第一九号証、第二三号証の一、二の成立はいずれも不知である旨述べ、その余の甲号各証の成立(甲第一号証の一ないし三については原本の存在も)をすべて認めた。

理由

一、原告は、肩書住所地を事務所として不動産貸付業と清掃業を営む者であるが、昭和三一年三月一五日被告に対し昭和三〇年度分所得金額を金五八万四三七七円として確定申告したところ、被告および訴外大阪国税局長がそれぞれ原告主張のとおりの更正処分、再更正処分、再調査決定および審査の決定をなし、それらは、それぞれの処分のころ原告に通知されたこと、原告が、本件所得金額計算の基礎となる帳簿書類、伝票等の原始記録を保存していなかつたこと、原告は、その所有土地四二一五坪のうち四割を他人に賃貸し、六割が空地になつていること、清掃事業収入が三五〇万一九六三円であること、清掃事業の雇人費が二一五万九二〇〇円であること、給与所得が一万一〇五〇円であること、はいずれも当事者間に争いがない。

不動産修繕費が一一万六七〇〇円であること、地代・家賃集金手数料が二万三三二五円であること、はいずれも原告が明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

二、被告主張のアパート収入について判断する。

(一)、原告は、被告主張のアパート今船荘の家賃収入は尾崎豊子に帰属する旨争うので考えてみると、成立に争いのない乙第八二号証によれば、右アパートの所有名義が尾崎豊子として固定資産課税台帳に登載されていることが明らかであるが、成立に争いのない乙第七一号証ないし第七七号証、第七八号証の一ないし五、第八五号証の一、二、甲第一号証の一(乙第八五号証の一と同一)、二、証人小橋秀一、金子正、山本守の各証言を綜合すると、原告は相当多数の土地、家屋を貸付けて収益を得て生計を主宰している者であつて、右のアパートの賃貸人は原告であり、また家賃の集金も原告の意を受けた者が行なつており、一方豊子(当時二六歳)は原告と同居しているその四女で、昭和三一年七月二四日の、更正処分に対する審査請求のさいにも原告の扶養家族に含められており、原告自身も、本件所得申告にあたつては、右アパート家賃の所得の帰属を争わず、右の審査請求の折には、右アパートを原告の資産項目に記載し、その固定資産税を必要経費として計上している事実が認められる。原告本人尋問の結果はいまだ右認定を覆えすにたりず、他に右認定を左右する証拠はない。そして、右認定の事実のもとにおいては、たとえ所有名義が豊子にあるとしても、右アパートの収益を実際に享受しているのは原告であり、アパート収入は原告の所得に帰属するとみるのが相当である(なお、所得税法八条は、所得控除対象としての扶養親族等の範囲を定めたものであつて、該所得が納税義務者に帰属するか、親族等に帰属するかの基準を直接定めたものではない。)。

(二)、前示乙第七一号証ないし第七七号証、第七八号証の一ないし五、成立に争いのない第七九号証、証人金子正、山本守、畚野佐一郎の各証言によると、アパート収入の明細は被告主張別表一、番号(1)ないし(4)各欄のとおり認められる。弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一八号証、第一九号証、第二三号証の一、二は前掲証拠に照したやすく信用できず、他に右認定を覆えすにたりる証拠はない。

次に、原告は、アパート家賃の集金を中村昭に委託し、同人が集金したうちから三三万円を原告の収入とし、他は同人の所得とする旨とりきめしていた旨主張するが、これに符合する原告本人尋問の結果は信用できず、他にこれを認むべき証拠はない。

結局、原告のアパート収入は、七一万三三〇〇円と認められる。

三、被告主張の地代収入について判断する。

成立に争いのない乙第一号証ないし第一五号証、第一七号証ないし第四八号証、第五〇号証ないし第六六号証、証人金子正の証言によれば、被告の調査時ではなくて、係争年度の地代収入の明細は被告主張別表二、番号(1)ないし(67)(ただし、同番号 (15) (49) (67)をのぞく。)各欄のとおりであることが認められる。右認定に反する成立に争いのない甲第九号証ないし第一七号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二三号証の一、証人木村まさの、浜口マサノ、阪口美智子、松本光庸、高田美恵子の各証言はこれを信用することができず、他に右認定を左右するにたりる証拠はない。

別表二、番号(15)については、成立に争いのない乙第一六号証、証人細見健二の証言、同証言により真正に成立したものと認められる甲第六号証の一、二によれば、右細見は係争年度の地代は月額七〇〇円と定めて該土地を賃借していたが地代を滞納したため、昭和三一年一一月一五日、原告と改めて賃貸借契約書をかわしたと推認され、そのさい係争年度の地代も含めて滞納地代を支払つたことが認められる。同表番号(49)についても、成立に争いのない乙第四九号証、甲第七号証、証人都志英雄の証言によれば、係争年度の地代総額は一万一三六四円であるが、右都志はこれを滞納し、昭和三四年一月一三日ごろ原告に支払つたことが認められる。原告は、右の地代収入はいずれも係争年度の収入に入らない旨争うので考えてみると、所得税法上、地代収入等の発生は、それらが係争年度内に、現実に支払われることを要せず、権利として確定することをもつてたりると解すべきであるが、前示のように細見、都志は係争年度に原告から該土地を賃借しており、原告本人尋問の結果によれば、地代の支払期は各月末と定められていたものと認められるから、右の地代債権はいずれも争係年度中に支払期が到来して確定したものと認められ、係争年度の不動産収入とみるのが相当である。同表番号 については、成立に争いのない乙第八〇号証によれば、同番号欄のとおりであつて、地代はすでに原告に支払済であることが認められ、右に反する証拠はない。原告のこの点に関する主張は採用できない。

結局、原告の地代収入は、すべて別表二のとおりであつて、その合計は、三一万三一〇〇円と認められる。

四、被告主張の家賃収入について判断する。

原告は、被告主張の西成区松田町所在の共同住宅は係争年度に存在せず、昭和三一年五月に尾野徳三郎が建築したものである旨主張するけれども、成立に争いのない乙第六七号証ないし第七〇号証、第八一号証、第八三号証の一、第八四号証、証人金子正の証言を総合すると、右の住宅は、係争年度において、木造柾葺(一部トタン)平家建のバラツク程度のものではあるが、すでに存在しており、(昭和三六年一二月中全焼滅失)原告が、被告主張別表三のとおりの家賃で賃貸して賃料を所得していたことが認められる(ただし同表番号(1)欄の居住期間については後記認定のとおり。)。成立に争いのない甲第二〇号証、第二一号証、原告本人尋問の結果によつては、いまだ右認定を覆えすにたりず、他にこれを左右する証拠はない(同表番号(1)の徳重初子は、前掲乙第八四号証によれば、昭和三〇年三月から一二月まで右住宅に居住していたと認められるから、年間家賃は一万三〇〇〇円となる。)。)

結局、原告の家賃収入は、六万三四〇〇円と認められる。

五、被告主張の固定資産税につき判断する。

(一)、先に判示したとおり、アパート今船荘の家賃収入は原告の所得に帰属するから、右アパートの固定資産税は右収入を得るために必要な経費というべきところ、成立に争いのない乙第八二号証、甲第一号証の二によれば、税額二万三八九〇円と認められ、右に反する証拠はない。

(二)、前示甲第一号証の二によれば、原告所有地四二一五坪の固定資産税額は、二二万三五六〇円であることが認められるところ、「所有地のうち空地の部分(右坪数のうち六割相当部分であることは前示のように当事者間に争いない。)については、原告がそこから何らかの収入を得ていたものではないことは弁論の全趣旨により明らかであつて、これに相応する固定資産税は、本件不動収入を得るために必要な経費に当らないから、原告所有土地の四割に当たる貸地分に相応する固定資産税八万九四二四円(前示二二万三五六〇円×〇・四)のみが必要経費として認められる。原告は、「つるや旅館」の敷地も原告所有地であり、右の空地を含めて「つるや旅館」に賃貸して原告が固定資産税を支払つている旨主張するが、右事実を認めるにたりる証拠はない。

結局、必要経費としての固定資産税は総額一一万三三一四円と認められる。

六、原告は、前記空地の清掃等に要した雇人費二三万円は不動産収入から控除すべき必要経費であると主張するが、所得税法上必要経費とは、当該総収入金額を得るために必要な経費に限定されており(所得税法一〇条二項)、本件についていえば、不動産収入、即ち前記認定のアパート収入、地代収入、家賃収入に対応した経費のみがこれに該当するといわなければならない。ところが、空地部分の清掃等の費用は、右のアパート収入、家賃収入に関係がないのはもちろん、右の地代収入を得るため現にこれと対応して支出されたものでないことは、原告も認めるとおり明らかである。原告の右主張は採用できない。

七、被告主張の事業所得について判断する。

前示甲第一号証の二によれば、事業税四万六六四〇円、組合賦金一八万四七〇一円、消耗工具費三〇万一九〇〇円、修繕費六万三八五〇円(修繕費総計一八万五五〇円から、前示の不動産修繕費一一万六七〇〇円を差引いた残)と認められ、他に右認定に反する証拠はない。以上は、事業収入を得るために必要な経費と認められるから、これと同じく必要経費である前示清掃業雇人費二一五万九二〇〇円前示のように当事者間に争いない。)との合算額二七五万六二九一円を清掃事業収入三五〇万一九六三円(同じく当事者間に争いない。)から控除すると、事業所得は、被告主張のとおり、七四万五六七二円となる。

八、以上判示したとおりの不動産収入、その必要経費、給与所得をもとにして、本件所得金額を算出すると別紙計算書のとおり、一五九万三一八三円となる。

九、従つて、右金額より内輪に本件所得金額を一二〇万一〇〇〇円とした被告の本件処分は、地代収入についての被告の仮定的主張について判断するまでもなく、適法なものであるといわなければならない。

よつて、被告の本件処分を違法とする原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山内敏彦 裁判官 平田孝 裁判官 石井一正)

別表一

アパート収入明細 アパート所在地西成区東今船町三

アパート名 今船荘

<省略>

判表二

地代収入明細

<省略>

別表三

家賃収入明細

借家所在地 西成区松田町一丁目九の一

木造平家建共同住宅

<省略>

別表四

固定資産税内訳

<省略>

(右表(2)は、原告所有土地に対する固定資産税総額二二万三五六〇円の四割相当額である。原告は、所有土地四二一五坪の四割を他に賃貸して地代収入を得ているから、これに対応する固定資産税額は、右のとおり計算される。)

別表五(原告主張地代例)

<省略>

計算書

<省略>

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